コンサートマスターへの質問

今週末は定期演奏会でベートーヴェンの交響曲第6番”田園”を演奏しました。
指揮はオーケストラの首席指揮者、ツァグロゼク氏です。
ツァグロゼク氏はベートーヴェンやモーツァルトなどの古典をよくプログラムに取り入れますが、彼のこだわりは”ノン ヴィブラート”!つまり音を響かせる為のヴィブラートなしで演奏することです。”ノン ヴィブラート”で演奏するには、ボーイングの使い方も普段と変えなくてはならず、ましてや音程も全くごまかせないのでなかなかきびしいものがあります。そして何といっても大事なのは”アーティキュレーション”。一つの音から次の音へいく時にどのような長さやタイミングでいくのか・・・一つ一つの音の長さは音型を作っていくので、非常に重要です。

で、今回のリハーサル中、またたくさんの質問やご指摘がオーケストラのメンバーから私に向かって飛んできました。
”この音はスタッカートも”くさび”もついていないけれど、一体どれくらいの長さで弾くの?” 
”このスタッカートはどれくらい短く弾く?(又は長く弾く?)” 
”このトリルは上の音から?それとも下の音から始めるの?” 
”この音の長さがみんなまちまちだけどどうするの?”
”ここでは弓を一度戻す?それとも戻さない?”
”このスフォルツァンドの加減は?”
”このクレッシェンドはメッツォ フォルテまで?それともフォルテまで?”

毎度のことなのですが、きりがありません。他の国のオーケストラで働いたことがないので、どこの国のオーケストラでもこのような質問が飛んでくるのかは分かりませんが、知人の話を聞く限り、これはドイツ特有のものだと認識しています。
今でこそ慣れっこになりましたが、初めて”この8分音符はどれくらいの長さで弾くの?”と聞かれた時は本当に焦りました。”え?そんなことを決めるのもコンサートマスターの仕事なの?ただの8分音符。普通に8分音符の長さで弾けばよいのに・・・”と内心思いましたが、まさかそうとも言えず”指揮者に確かめてみるね。”と言いました。確かに8分音符にも色々あります。長いのや短いのや、弾く弓の場所によっても大分印象が変わります。もちろん指揮者が的確に指示してくれる場合もありますが、いまいちあいまいな時も。そうなるともう全ての音の長さが気になってくるのです。
一つのクレッシェンドにしても、どれくらいまで大きくするかというのは実はとても大事なこと。それにしてもメッツォ フォルテ(少し大きく)までかフォルテ(大きく)までかとは・・・・・。いやはや参ってしまいます。
このような質問は日常茶飯事のように起こることが分かってからは、信頼できるスコア(オーケストラの全パートがのっている楽譜)を手に入れて事前に勉強していき、リハーサルでおもわぬ質問をされた時にでもすぐチェックできるよう持ち歩くようになりました。
でも結局何が一番大事かというと、オーケストラのメンバーにこういう質問をされた時、答えが何であれすぐに自分の意見・考えを即答できるということなんだと思います。つまり、メンバーを”迷わせない”ということです。指揮者がどういう音楽を作りたいのかきちんと把握することがまず大事ですが、指揮者の考えがよく分からない時には、自分の信じる道をいきます。その時の為にもできるかぎりの準備をしなければならないし、とても難しいことなのですが、私お得意の”迷える鳥”になってはいけないのです。

自分が思い描いていた通りの音がみんなで出せて、それが音楽にフィットした時の楽しさや嬉しさはひとしおです。そんな瞬間を増やす為にも、もっともっと学ばないといけないなぁ・・とリハーサルの度に思うのでした。
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by Sayakomomo | 2011-02-13 10:19
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